さくら散る
- Kiyoko Buluttekin
- Jul 27, 2017
- 3 min read
知らせが来たのは翌日の夕方で、地元の小学校に体験入学中の娘に「さっちゃん死んじゃったよ」と言うと、少し涙目になりながらも、「さっちゃんはいつも私の傍にいるから泣かない。大丈夫。」と大人びたことを言うので驚いていたら、就寝時布団に入った途端号泣し始め、「やっぱり無理。胸が苦しくて息が出来ない。こんなに辛い事に耐えられない。」と泣き叫んでいました。
私はというと、涙ぐんではいましたが、娘ほどの勢いはなく、「どうしてお母さんは悲しくないの?」とまで言われる始末。本当に、日本からわざわざ遠くトルコまで連れて来た、たった一匹の愛猫が死んでしまったというのにどうしたことでしょう。
「恐らく学校でも泣くのでは」と思い、連絡帳に愛猫の死についてお知らせした所、案の定朝からわんわん泣いていたと、先生からお返事がありました。
生まれた時から一緒にいた、ましてや一人っ子の娘にとって、さくらの死は堪え難く、命の儚さ、尊さ、残酷さ、潔さ、全てが重く、それでも時間が経てば思い出になっていくこと、心が癒えていく様、今まで感じた事のない、色んな感情を学ばせて貰っているんだと思いました。
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さくらとの出会いは、私の猫好きに目をつけた亡き父が、「知り合いの家で仔猫が生まれた。貰い手を探している。」という情報を入手したことがきっかけでした。
見に行った時は4匹の兄弟姉妹と一緒にいて、生後3週間の小さな小さな赤ちゃんでした。
1匹は黒猫でしたが、他の3匹はほぼ同じ柄で見分けがつかず、1匹だけしっぽの所に茶色の模様があり、一番元気に動き回っていたので、その子を貰う事に決めました。それがさくらです。
紆余曲折あり、日本では4年の間に3軒も家が変わってしまったさくらでしたが、更に私の結婚が決まり、ついには海外渡航まで余儀なくされてしまいます。
あの時のさくらの恐怖や不安を思うと、今でも本当に申し訳なかったと思っています。
その後夫とも打ち解け(最初の1ヶ月は威嚇してましたが)、新しい家族が増え、状況の変化が苦手な猫なのに、それでも頑張って慣れてくれました。
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私たちが日本にいる間、1週間ほど夫が仕事で留守になることが決まってしまい、義父母に託すしかないということになっていたのですが、さくらにも義父母にも申し訳なく思っていた矢先、夫の仕事が始まる2日前、「さっちゃん元気?」と声をかけて反応があったので少し家のことをして戻ったら、ベッドの上で本当に眠っているみたいに、動かなくなっていたそうです。
夫は本当に死んでしまったか病院まで確認に行き、その後動物霊園に赴き、自分の手で埋葬し、更に翌日クリスタルを買って行き、埋葬した場所に敷き詰めたそうです。
夫にとっては初めてのペットで、義父母に「もう面倒を見なくてもいいから」と伝える際、後から後から涙が溢れて、上手く説明できなかったと言っていました。
「大の大人が」と笑う人もいましたが、私の都合で連れて来た猫を大事に思ってくれて有り難く、夫がいる時で良かったと心から思いました。
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さくらのいない家に帰るのは初めてで、ここにいてもどこにいても、さくらの匂いでいっぱいで、「本当にいないのかな?」「あの椅子で寝てるんじゃないかな?」「振り返ったらソファーに座ってるんじゃないかな?」とまだまだ慣れません。
最期は一緒にいれなくてごめんね。
今まで傍にいてくれてありがとう。
私の所に来てくれてありがとう。

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